違憲の閣議決定~憲法訴訟で争う道(2)

2014-07-04

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 本論に入る前に、問題点を2つ。
 第一に、閣議決定は裁判所の違憲審査の対象になるのか、という点。
 憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めています。ここに閣議決定が含まれていないので、心配される方もあるかもしれませんが、これは大丈夫です。法律、命令、規則又は処分は、例としてあげられているだけで、これ以外は違憲審査の対象とはならないという意味ではありません。裁判所も一定の条件の下に、条文にあげられていない条約や立法不作為(国会がなすべき立法をしないこと)が違憲とされる場合があることを認めています。
 第二に、だれでも(たとえば私やあなたでも)、この閣議決定の違憲性を争う裁判(違憲訴訟、憲法訴訟)を起こせるのか、ということです。
 結論から言うと、これはできない、と考えておいた方がよいでしょう。
 違憲審査制度には(1)一般的に違憲審査をする憲法裁判タイプ(ドイツなど)と(2)裁判所が民事や刑事、行政事件などの具体的な事件を裁判するにあたって、その事件に適用される法律が違憲でないかを審査する司法裁判タイプ(米国など)があります。日本国憲法の違憲審査制度は米国の判例法理を受け継いで条文にしたものですので、そういう歴史的な沿革を重視して、日本の違憲審査制度は(2)の司法裁判タイプと考えられています。つまり、訴えの利益がある人が具体的な裁判の中でしか争えないのです。これは判例・学説ほぼ一致した見解なので、覆すのはむずかしいでしょう。

 それでは、違憲の閣議決定を訴訟(違憲訴訟・憲法訴訟)で争う道をいくつか考えてみます。

(1)正面突破、がっぷり四つ型
 違憲であることを理由に、閣議決定の無効を確認する訴訟、または閣議決定を取り消す訴訟を起こす。1人でももちろんできますが、たくさん仲間を集めて提訴することもできます。
 このような訴訟は先に述べたように具体的な事件性がないとして、ふつうは却下(門前払い)されると思います。ただ、たとえば複数の野党の党首や有力な国会議員、元首相らが原告として名を連ねれば、裁判所もちんけな事件としてむげに扱うこともできません。違憲審査制は私権(個人の権利)を守るだけでなく、憲法体制を守る大切な働きもあるのですから、裁判所は「一見してきわめて明白に違憲」の閣議決定を放置してよいのか、というプレシャーを受けることになるでしょう。そういうプレシャーの下に、原告側の法律構成によっては訴えの利益があると認められるケースも出てくるかもしれません。

(2)民事裁判型
 閣議決定の違憲性だけが問題となっていますが、このエキセントリックな閣議決定によって、集団的自衛権の行使の主体である自衛隊自体の合憲性も相当怪しくなっています。憲法が集団的自衛権の行使を認めていないのなら、その集団的自衛権を行使する実力組織である自衛隊も、違憲となるのが筋道だからです。
 そうだとすれば、たとえば自衛隊基地の中に土地を所有する地主が、自衛隊の違憲を理由として借地契約の解除(あるいは無効)を求める民事訴訟を起こすことなどが考えられますね。

(3)刑事裁判型~恵庭事件型
 自衛隊法などには様々な罰則規定があります。たとえば、恵庭事件で問題となった自衛隊法121条は「防衛の用に供する物を損壊」した者を5年以下の懲役としています。
 自衛隊法違反で起訴された人が、閣議決定によって集団的自衛権を行使することになった自衛隊は違憲の存在だから自衛隊法も違憲であり、無罪だと主張するケースが考えられます。違憲訴訟を起こすためにわざと自衛隊法違反の行為をするというのは行き過ぎであり、よいことではありませんが、突発的な事件が結果的に憲法裁判となる可能性はあります。

(4)裁判が法令により認められているケース
 地方自治体の自衛官募集事務は、地方自治法にいう法定受託事務となっています。地方自治体が、これを集団的自衛権の行使を認めた閣議決定により自衛隊が違憲の存在となったことを理由に拒否します。国は是正の指示をしてきたら、国地方係争処理委員会に審査を申し出ます。委員会が主張を認めなかったら、法律の規定により高裁に提訴できます。
 個人的にはこれはかなり有望だと思います。ただ、国が違憲判断を避けるために是正の指示を出さない可能性がありますね。
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プロフィール

hiroshi

Author:hiroshi
久保谷洋(くぼたに・ひろし)
ジャーナリスト、翻訳家。
元朝日新聞東京社会部記者、元朝日学生新聞社出版担当。タイトルはブログを始めたときの肩書きが「出版担当の役員」だったときにつけたものです。ある程度定着しているので出版担当をやめた後も、そのままにしています。2016年4月~外務省研修所非常勤講師(オランダ語担当)。

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