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オランダ語の教科書(1)「ニューエクスプレスオランダ語」「ゼロから話せるオランダ語」

2015-08-14

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 タイトルに「オランダ語の教科書」と書きましたが、このブログでは(1)各課の冒頭に対話文などの本文を掲げ(2)この本文に対して語注や日本語訳を提示した上で(3)その課の本文を理解するのに必要な文法事項を解説した教材で(4)ネイティブスピーカーが本文などを吹き込んだレコードやテープ、CDなどの音声が付属している(あるいは別途購入できる)ものを教科書と呼ぶことにします。
 このような意味での教科書としては、現在、タイトルに掲げた「ニューエクスプレスオランダ語」と「ゼロから話せるオランダ語」が最も多く使われていると思いますので、この2冊を取り上げます。先日書きましたように、評定の★は5つが最高です。

「ニューエクスプレス オランダ語」(川村三喜男、佐藤弘幸著、白水社)★★★★
 非常に勉強しやすいテキストです。なるべく短期間にオランダ語の全体像を見渡せるように、枝葉を刈り込み、本当に大切な幹の部分だけをしっかり学ばせるという方針なのでしょう。英語について一通りの知識があるひとなら、毎日1時間かければ3カ月くらいで終了できる分量です。フランス語やドイツ語など第2外国語を勉強したことがある人なら、60時間程度(毎日1時間で2カ月)で終えることができるかもしれません。
 文法解説の例文も記憶の負担にならないようにシンプルなものを採用し、新出単語が続々登場するような事態は避けています。本文や例文が軽くつくってあるので語彙は不足がちになりますが――巻末の語彙集から推測すると700語弱――、ところどころに単語力アップのコーナーを設けてこの欠を補っています。このコーナーの単語リストも暗唱すれば、本文、例文と合わせて約1000語のオランダ語をものにすることができます。スタートラインとしては一応十分な数でしょう。
 欠点は最初に述べた長所の裏返しで、学ぶべきことを精選したために、重要な文法事項、たとえば受身、大過去、仮定法、関係代名詞についての解説が省かれ、オランダ語を読む上で非常に重要な語順(特に従属節中の動詞の位置や形)についての記述が十分ではない点です。ですから、オランダ語の新聞や解説文、小説などを読むことを目標に勉強する人は、これらの事項について別の教材で勉強する必要があります。私はオランダ語を読むことを主眼にしているので、この点で★一つマイナスとしました。
 ちなみに、この本のオランダ語には、ベルギーのオランダ語の影響が見られます。たとえば、発音の仕方(たとえばvやwの発音)や語彙の選択(たとえば、フルーツジュースをfruitsapとしていること。オランダではvruchtensapがふつう)にその特徴が現れています。ただ、それは必ずしも欠点とはいえません。どちらもオランダ語に変わりはありませんし、どちらが正しいとか、すぐれているとかいった問題でもありません。オランダ語なのだからオランダで話されている言葉が標準と安易に考えてしまいがちですが、話はそう単純ではありません。たとえば、私はかつて朝日新聞につとめていましたが、ジャーナリズムの観点からいうと、ベルギーのオランダ語の方が圧倒的に重要だと思います。ブリュッセルにEU本部があるからです。ブリュッセルはフランス語とオランダ語の両語地域とされていますが、実態としてはオランダ語地域のまっただ中にあり、多くの住民がオランダ語を母語としています。私が新聞記者をしていた時代には、朝日、毎日、読売など大手新聞社はいずれもブリュッセルに支局・総局を置いていました。オランダに支局があったのは共同通信だけだったと記憶しています。どちらが本家か、などと議論しても余り意味はないのです。

「ゼロから話せるオランダ語」(清水誠著、三修社)★★★★
 これもすばらしい教科書です。ただ、ニューエクスプレスとはコンセプトが根本的に異なります。
 「ゼロから話せる」とか「会話中心」などいうヤワなキャッチフレーズにだまされてはいけません。この本には標準的な文法事項が網羅されているだけでなく、従属節中の動詞群の語順や代替不定詞といった、オランダ語を読み解くのに必要なかなり高度な知識までぎっしり詰まっているのです。直感的な話ですが、この本に載っている文法や語法に関する事項を10とすると、ニューエクスプレスで扱っている事項はせいぜい4~5程度でしょう。この本文と例文を完全にマスターすれば、すぐにでも辞書を引き引きオランダ語の新聞ややさしい小説に取り組むことができるはずです。
 発音の解説も、同種の教科書に比べて詳細かつ明快であり、この点でも好感が持てます。巻末に語彙集だけでなく文法・語法インデックスがあるのもよいですね。
 欠点は各課の分量が後半にはみ出した文法編も含めると等分でなく、「毎日1課ずつやるとか」「1課を3時間で終える」といった計画を立てづらいこと、文法事項を定着させるための練習問題がないこと、全体の分量が多いので初学者が最初からすべて覚えようとすると途中で挫折する可能性が高いこと、などでしょう。こういった諸点を考慮して、★一つマイナスとします。
 ただ、たとえば練習問題がない点ですが、例文が理解できたらその日本語訳を別のノートに書き出しておき、日本語訳から元のオランダ語を復元できるようになるまで繰り返し練習すれば必要かつ十分だと思います(最近、瞬間英作文なるものがはやっており、私もその効用を認めるのにやぶさかではないのですが、少なくとも初歩の段階では日本語→オランダ語の練習は口頭ではなくて、きちんとノートに書き出して行うべきです)。この本には暗唱するに足る例文が収められていることを保証します。
 
 語学が好きでオランダ語の新聞や小説を読むことを最終的な目標にする人には、「ゼロから話せるオランダ語」をすすめます。ただ、相当手強いですから覚悟してやって下さい(独学ではなく適切な指導者がいれば別です)。短期間でオランダ語の概略をつかみたいとか、オランダ人と基本的なコミュニケーションができれば、あとは少しずつ知識を積み上げていけばよいという方には「ニューエクスプレスオランダ語」をすすめます。どちらか迷う場合は、「ニューエクスプレス」がよいと思います。「ニューエクスプレス」を終えた後、「ゼロから話せる」をやるという手もありますね。
 
 
 
 


 
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テーマ : 外国語学習
ジャンル : 学校・教育

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プロフィール

hiroshi

Author:hiroshi
久保谷洋(くぼたに・ひろし)
ジャーナリスト、翻訳家。
元朝日新聞東京社会部記者、元朝日学生新聞社出版担当。タイトルはブログを始めたときの肩書きが「出版担当の役員」だったときにつけたものです。ある程度定着しているので出版担当をやめた後も、そのままにしています。2016年4月~外務省研修所非常勤講師(オランダ語担当)。

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